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art education [path-art]

美術教育って一体なんだろう・・・と上野秀実氏のお話しを伺って感じたことです。
上野氏はご自身が作家であり、高校で美術を教えて今年で36年。色々な変化があったことと思います。
近年、美術教育で最も変化したのは鑑賞の考え方と。これまでは作者の生きた時代背景や作者の人となりを知ること、
使われている材料・構図や色彩などを造形的な分析、作者が作品に込めたことなど・・・。
もちろんそれは悪いことではありませんが、今は作品をどう見て、何を感じたかという生徒個人の中で沸き起こった感覚を大事にすることや
見方・感じ方が人によって違うことを認め合えることなどに重点が移ってきているそうです。
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こちらは問題解決のデザインという授業で行われた1年生の作品。自分を取り巻く目の前の社会にある課題に気づき、
それを主に色や形といった造形的な手法で解決に導く考えができることを狙ったものです。
考えを他者に伝えられるよう、効果的に図案や文章を織り交ぜて表現できることを目的にした教材。
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この作品は自画像です。自分自身を花に例えて表現する。自分の外見よりも性質や趣向、将来の希望などに焦点をあてる必要が出てきます。
それを花の形や色、茎の長さや葉の様子はもちろん、どのような季節にどのような場所で咲くのか・・・自分の状況に照らし合わせた比喩。
より自分と対峙することになりそうです。
上野氏が画期的だと思うのは先生からの働きかけではなく、制作を通じて垣間見える生徒の発想力や表現力。
柔軟な考えを元に作られる作品や表現の中には素晴らしいものに出会うことも・・・。
「すでに社会の中に美術の要素は多様な関わりで溶け込んでいると感じます。
その一方で、美術の持つ普遍性を追求するような教育活動も一層充実させなければと思います。
全ての感覚をフル活用して生み出される表現や作品にはその人の中に沸き起こった完成が形を変えて宿ります。
まさに芸術的な体験は生きる実感を引き出します。だからこそ社会全体でアートを享受できる仕組みが広がってくれたらと願っています。」
※尚、写真は上野秀実氏からお借りしました。

stick to Mizue [path-art]

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根室出身で戦後釧路で水彩画の制作を始めました。
全て独学。水彩ではなく、みづゑをご自身の作品を表現なさったそうです。
確かに水が多用されている感じが作品からも伝わってきます。
被写体は、バラ、少女、そして風景。どこかで見たことがあるものが作品の中にも取り込まれています。
ただ、心象風景ですから全く実物のものとは同じではないかもしれません。
知る人ぞ知る・・秋山あや子。
ものすごい数の作品を描かれたそうで、今回も展示する点数を企画当初から相当増やしたと武束氏もおっしゃっていました。
淡く儚げな少女、生命感あふれるバラ、異国のロマンティックな街角・・・。
優しい色彩、そして時としてダイナミックな筆の運びをじっくりとご覧いただければと思います。
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(秋山あや子 みづゑ展は11/29まで釧路市立美術館で開催中)

artificial objects and stars [path-art]

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星の写真を撮られる方が最近は増えてきたような感じがします。
ただ、今から10年くらい前からずっと星に魅せられて撮影を続けてきたのが内海大輔氏。
時間のできた昼間にロケハンをして、星のイメージを膨らましつつ、夜に挑む。
彼の作品の特徴は人工物とともにある星空・・・。
これはどこ?このオブジェは?と普段とは違う見え方にハッとさせられます。
そこが彼の狙いかな?とも思うのですが、実は人工物が彼の中ではメインとのこと。
ですから施設だったり、変わったオブジェだったり、どこかで見たことのあるものが写しこまれています。
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春夏秋冬、星の見え方、見えるものは違います。一番好きな季節は天の川がくっきり見える夏とのこと。
最近は、月の灯りの中での星も撮られています。流石に満月の時ではなく、三日月などの淡い光の時。
それも雰囲気がありますよね。
今はカメラが良いものがたくさん出ているので、撮ろうと思えば誰でも撮れてしまう・・とのこと。
そこで「らしさ」を追求するのはなかなか至難の技かもしれません。
満天の星、見上げるとそこにある綺麗な星空をたまに感じて欲しい。
そんな優しい気持ちが彼の作品からは伝わってくると私は思います。
東京国際フォトアワード2019のプロフェッショナル、ネイチャー部門でゴールド(金賞)を受賞、
そして、モスクワ国際フォトアワード2020のプロフェッショナル、ネイチャー部門で佳作を受賞。他にも様々なところで活躍なさっています。
※尚、写真は内海大輔氏からお借りしました。

youth of artists [path-art]

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北海道立帯広美術館の収蔵作品の中から、作家が20代の頃の作品だけを集めました。
約10人の作家の25点が選ばれました。どれもエネルギッシュな若い感覚のもの・・・と思いきや
すでに作家の個性が確立されたものも中にはあるそう。
技術や表現を模索しながら試行錯誤している痕跡も見ることができるかもしれません。
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福地氏が20代ですでに画風が確立されていた早熟な画家と感じているのは、ロートレックとカッサンドル。
特にカッサンドルは、現在では20世紀ポスターデザインを代表する作家として知られていますが、
24歳の頃にパリ現代装飾美術・産業美術国際博覧会でグランプリを受賞して脚光を浴びています。
その後興味は書体にうつり、その世界でも活躍なさったそう。
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若さあふれることには変わりがありません。例えそれが苦悩であっても、すでに完成されたものであっても。
作品から伝わる感覚・・・楽しんでみてはいかがでしょう。
※尚、写真は北海道立帯広美術館 福地大輔氏からお借りしました。
(旅立ちー作家たちの青春展は12/6まで北海道立帯広美術館で開催中)

kushiro color project・・・4 [path-art]

今回のプロジェクト、釧路の素材で絵の具を作り、それを使って作品を作る。
住んでいても知らない「くしろ」。学校の周辺から素材を探し、そこからの展開で作品を制作。住んでいるからこそ感じることのできる「くしろ」。
それぞれの思いが完成しました。
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poster.jpg 自分たちが住んでいる釧路。
感じる釧路。
この授業でおそらく多くの生徒さんが自分が暮らす地域について見つめ直し、新たな発見をしたことと思います。
インタンビューさせていただいた生徒さんの作品からは、一旦釧路を自分の中で咀嚼し直し、
それをどう表現するのか・・。その悩んだ姿が良い形で表現されていると感じました。
釧路についても自分についても対峙する良い時間が持てたのでは?と思います。
その成果をぜひご覧いただければと思います。
そしてご自身が感じる釧路も感じていただければと思います。
・・・今回の釧路カラープロジェクト。
北海道教育大学附属釧路中学校 美術(更科結希氏)の授業にお邪魔して、取材させていただき、
ラストは放課後に代表して5人の生徒さん(元島さん、西尾さん、藤井さん、髙橋さん、安倍さん)と
先生にインタビューさせていただきました。

(Art and We 北海道教育大学附属釧路中学校 中学2年美術作品展〜くしろColorhunt & Create〜は
10/07から10/11まで北海道立釧路芸術館 フリーアートルームで開催)

soil and stone [path-art]

京都宇治市在住の福井安紀氏は、土や石を粉にして絵を描くこと約30年。主に板に描いていますが、当初は紙に描いていたそうです。
でも紙に絵を描くとバックを描く事が必要になり、板なら対象物だけを描く事ができると思ったのがきっかけと。
なぜなら、土や石は貴重なものだから。バックは面積が大きいし、単調だから、絵の具にするときの気持ちも盛り上がらなかったのです。
逆にいうと、石にしても土にしても悪いな・・・と思ったとおっしゃっていました。
よく考えてみたら大昔の絵にはバックを塗っていないのです。例えばラスコー洞窟の絵や絵馬も。
板にたどり着くまでは金属の板に描いたり、河原に落ちている石に描いてみたりもしたそう。
京都の宇治市に住んでいらっしゃるので、身近にあったのがお茶を入れる茶箱。その茶箱に使う杉の板を分けてもらったのが最初。
十分に乾燥している板を使います。箱やさんでも7年位乾かすそうで、それを分けてもらった後さらに3年位乾かすそうです。
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全国色々なところに出向き、そこの土地のものを使って絵を描いています。
意外と自分たちが日々足で踏んでいる地面の色について認識していないと思うそう。
なので、絵にすることで、例えば釧路の砂浜の色はこんな色。湿原の土の色はこんな色。
土地に人にとってそれが意味のあるものになり、新しい発見につながるんじゃないかと思うとおっしゃっていました。
「風土という言葉がある様に土の色がそのまま土地を表している可能性も高いので、そういう事を少し意識するだけでも楽しい事になるんじゃないかな」
今の私たちは色々な色に囲まれて生きています。でも大昔の人はそこにあるもので自分が経験した色の中で綺麗だなと思う色で表現したと思うのです。
だから大昔っぽい原始的な喜びみたいなものと直結している気がする・・・と福井氏。
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「アートとはとにかく美しいもの。
美しいとは・・・

何々だから何々という順接的なつながりで得られた結論というのは
あまり美しいとは思っていません。
逆接的で繋がるようなものが美しいと思うのです。
お金があるからフェラーリに乗るのではなく、
お金がないけどフェラーリに乗るみたいな。
その方が価値があるように感じるのです。
そういうものがアートだと思います。」

into fiction / reality [path-art]

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2.JPG あまりにも色鮮やかな色彩。
そこの写し出される現実、もしくは虚構。
蜷川実花という人間が赤裸々に語られるself-image。
今回の展覧会は6つのコーナーで展開しています。
・色褪せない造花の花たちを撮影した「永遠の花」
・そこに立つと桜にあらゆる方向から囲まれる「桜」
・著名人やスポーツ選手を撮影した「Portraits of the Time」
・父親との日々を写真と言葉で表現した「うつくしい日々」
・等身大の自分を見つめる「Self-image」
・様々な被写体を鮮やかにとらえた「INTO FICTION/REALITY」


写真家の枠を超え、映画、ファッション、デザインなど多方面で活躍中の蜷川実花。
一度見たら忘れられないほどのインパクトを与えてくれる作品群です。
自然が織りなす原色に近い感覚の色彩はどれだけ強烈でも落ち着いた感覚さえ覚えてしまう。
その中で忽然と現れる自身のモノクロの姿。生と死、死の向こうにある世界さえ写し出している様にさえ思えてしまう・・・。
耳塚学芸員は「私は桜のコーナーが大好きです。天井にも床にも桜があって、その桜は同じピンクでも濃淡があって、
そこでは写真を撮ることも可能です。ぜひご覧くださいね。」とおっしゃっていました。
※尚、写真は北海道立帯広美術館 耳塚里沙氏からお借りしました。
(蜷川実花展ー虚構と現実の間にーは12/6まで北海道立帯広美術館で開催中)

serenity [path-art]

彼の写真から感じる空気、もしかするとそれが音となって感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ジョン・セクストンの写真を見てから彼の人生は変わります。
職業まで変えて、根室に住居を構えました。なぜなら・・・ここには彼の求めているものがたくさんあるから。
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静謐・リリカル・旅
彼の口から発せられた写真に求める3つの要素。
それが兼ね備えたものが一つの作品から感じることのできる作品。それが彼の目指す写真。
すべて計算し尽くされた緻密な思考があり、被写体に向き合っていらっしゃるそうです。
ここからはじまるstory。一つの作品に吸い込まれそうになり、別の世界がまた広がっている感覚。
イメジネーションを刺激されます。
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ベースを長いことなさっていたこともあるそう。
「音楽に例えるなら、ビル・エヴァンスとパット・メセニーを足して2で割ったような写真」と
自らの作品について説明してくださいました。
現在住んでいる根室、そしてその周辺は特別な場所とおっしゃいます。
最果ての地、孤独と静けさが漂う隔絶されたところ、これをご自身の美意識を通し表現なさりたいそう。

「私はアートによって人生が大きく変わりました。
転職も移住も、アートがそうさせたのです。
そういう意味で私にとってアートとは・・・
<人生に最も影響を与えるもの>なんです。」
※尚、写真は逸見光寿氏からお借りしました。

for someone [path-art]

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綺麗な色と大きな布に、会場に入った途端圧倒されます。
あまり今は見る事が少なくなった大漁旗、ここにターゲットを当てた展覧会です。
大漁旗、かつては海から陸へ「大漁」を伝えるための通信手段でした。
「大漁だから早く次の準備をしてね」という合図、コミュニケーションツールだったのです。
ところが、現在では進水式を迎える船主への贈り物として、大漁を願う人々に寄り添ってきました。
ですから図案には縁起の良いもの、力強さを連想させるもの、船が転覆しない様に安全祈願するもの、
大漁を願う気持ちがこもっているのです。
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使われている色は、赤・黒・黄色・青・白が目立ちます。赤は海の青に映える様に必ずと言っても良いほど使われる色とのこと。
大漁旗は、自分の一人のためのものではなく、必ず相手がいて作られたものです。
昔は陸とのコミュニケーションのため。現在はご祝儀、おめでとうの気持ちや安全祈願の思いが詰まっているのです。
一見派手に見える大漁旗ですが、その裏にある人の想い、人情を考えると、優しい気持ちに包まれるはず・・・。
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(大漁旗展〜つたえる、いろどる〜は9/27まで北海道立釧路芸術館 フリーアートルームで開催中)

mystery of music and Fingerprints [path-art]

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謎だらけ・・・だからこそロマンがある。
生物学者であり、フェルメールが大好きな福岡伸一氏が謎解きに挑戦しているプロジェクトの全貌がひとめでわかる・・・そんな展覧会です。
17世紀オランダ絵画黄金期を代表する作家の一人、フェルメールの全37作品がここで見ることができるのです。
もうすでにこの世にないものもあるので、世界中にあるフェルメールの作品を全部集めることは不可能なのです。
キャンバス地に描かれた絵画を最新のデジタルリマスタリング技術で、描かれた当時の色調とテクスチャーを求めて再創造したものです。
経年変化した絵画とはまた違った魅力がそこにはあります。
色々なネタがあって、その音声ガイドを聞きながら進むと楽しさ倍増!!(音声ガイドは観覧料の他に350円が必要です。)
例えば地理学者と天文学者は同一人物か?
その人物はフェルメールと同時代のオランダ人科学者アントニ・ファン・レーウェンフックなのか?
楽譜には何が描かれているのか?
絵画の中にある絵画はフェルメールのおばあさん所有のものなのか?
ある作品に描かれている人物は娘なのか?
まだまだ・・・謎がたくさん作品からふられてきます。ちょっと変わった展覧会。フェルメールにどっぷり浸かってみませんか?
(フェルメール 音楽と指紋の謎展は10/18まで釧路市立美術館で開催中)

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